1光で脳の神経をあやつる研究にノーベル賞 アメリカとドイツの3人


東京大学のいなみまさひこ教授は、長い間、立体映像や、現実の景色に映像を重ねて見せる「拡張現実」の研究を続けてきました。拡張現実とは、目の前の本物の景色にコンピューターの映像を重ねて、現実を広げて見せる技術です。

ある日、いなみ教授は「人の後ろにある景色を、その人の体の上に立体的に映し出せば、体がとう明に見えるはずだ」と気付きました。そのとき頭にうかんだのが、SFまんが「攻殻機動隊」に登場する「熱光学迷彩」でした。熱光学迷彩は、この作品の中で、体をまわりの景色にとけこませて見えなくする空想の装置です。いなみ教授は、自分が思いついたことは、まさにその装置と同じだと気付いたと話しています。
この気付きから、いなみ教授は、背景の映像を体の上に映して姿を見えにくくする「光学迷彩」の技術を実現しました。
「迷彩」という言葉は、まわりの景色に合わせた色や模様で姿を目立たなくすることを表します。いなみ教授は、この言葉が「背景と色を合わせる」という発想につながったと説明しています。
いなみ教授は、2021年4月9日に行われた対談の中で、こうしたいきさつを本人の言葉で語りました。さらに、テクノロジーの力で人の身体能力を広げる「自在化身体」という考え方を提唱していることも説明しました。自在化身体とは、テクノロジーを使って、人の体でできることを思いのままに広げていこうという考え方です。
いなみ教授は、1999年3月に東京大学大学院工学系研究科の博士後期課程を終え、2001年9月に東京大学大学院情報理工学系研究科の助手になりました。2015年11月に同じ研究科の教授となり、2016年4月からは、東京大学の「先端科学技術研究センター」の教授も務めています。このセンターは、新しい科学技術を研究する東京大学の組織です。
まんがにえがかれた空想の技術が、研究の積み重ねと一つの気付きによって、現実のものになりました。