遺伝子いでんしは同おなじなのに、かゆがるマウスとかゆがらないマウス

遺伝子は同じなのに、かゆがるマウスとかゆがらないマウス
チリダニ 出典: Gilles San Martin from Namur, Belgium (CC BY-SA / Wikimedia Commons)

広島大学ひろしまだいがくと理化学研究所りかがくけんきゅうしょの研究けんきゅうチームが、2種類しゅるいの実験用じっけんようのネズミ(マウス)を作つくりました。2種類しゅるいのマウスは、持もっている遺伝子いでんしがまったく同おなじで、どちらもダニに対たいしてアレルギーを起おこします。ちがうのは、体からだの中なかで敵てきを見分みわける細さいぼうが持もっている「T細胞受容体さいぼうじゅようたい」という、たった1つの部分ぶぶんだけです。

遺伝子は同じなのに、かゆがるマウスとかゆがらないマウス
チリダニ 出典: Gilles San Martin from Namur, Belgium (CC BY-SA / Wikimedia Commons)

ところが、2種類しゅるいのマウスのひふにダニの成分せいぶんをくり返かえしぬると、片方かたほうのマウスだけがはっきりと体からだをかゆがる行動こうどうを見みせ、もう片方かたほうには見みられませんでした。どちらも同おなじようなアレルギーの病気びょうきの状態じょうたいになったのに、かゆみの現あらわれ方かたにはっきりした差さが出でたのです。

この研究成果けんきゅうせいかは、広島大学ひろしまだいがくの神かぬま修教授おさむきょうじゅらと、理化学研究所りかがくけんきゅうしょの井上貴美子室長いのうえきみこしつちょうらのチームが、2026年ねん7月がつ1日ついたちに発表はっぴょうしました。論文ろんぶんは6月がつ24日にじゅうよっかに、国際的こくさいてきな学術誌がくじゅつし「Allergology International」にのりました。

研究けんきゅうチームが注目ちゅうもくしたのは、「T細胞さいぼう」という細さいぼうです。T細さいぼうは、体からだの中なかに入はいってきた物質ぶっしつが敵てきかどうかを見分みわけて、体からだを守まもるはたらきをします。見分みわけるときに使つかう目印めじるしのような部分ぶぶんが受容体じゅようたいで、その形かたちはT細さいぼうごとに少すこしずつちがいます。

ダニの成分せいぶんのように、アレルギーの原因げんいんになる物質ぶっしつを「抗原こうげん」といいます。研究けんきゅうチームは、ダニのこう原げんに反応はんのうするT細さいぼうから、「核移植かくいしょく」という方法ほうほうでクローンマウスを作つくりました。核移植かくいしょくは、細さいぼうの中なかにある遺伝子いでんしのつまった部分ぶぶんを卵たまごに移うつして、元もとの細さいぼうとまったく同おなじ遺伝子いでんしを持もつ動物どうぶつを作つくる方法ほうほうです。こう原げんに反応はんのうするT細さいぼうからクローンマウスを作つくったのは、世界せかいで初はじめてです。こうして、同おなじダニのこう原げんに反応はんのうするけれども、受容体じゅようたいの形かたちがちがう2種類しゅるいのマウスができました。

2種類しゅるいのマウスのひふにダニのこう原げんをくり返かえしぬると、どちらのマウスにも「アトピー性皮膚炎せいひふえん」に似にた状態じょうたいが現あらわれました。アトピー性せいひふえんは、ひふがかゆくなったり赤あかくなったりする病気びょうきです。マウスの体からだの中なかでは、アレルギーに関かかわる「IgE抗体こうたい」という物質ぶっしつが作つくられ、ひふにはえんしょうを起おこす細さいぼうが集あつまりました。この点てんは2種類しゅるいのマウスで同おなじでした。しかし、病気びょうきが進すすむにつれてはっきりとかゆがる行動こうどうを見みせたのは、片方かたほうのマウスだけでした。かゆみに関かかわるIL-22という物質ぶっしつがひふでどれくらい作つくられるかも、2種類しゅるいのマウスでちがっていました。

2種類しゅるいのマウスは遺伝子いでんしがまったく同おなじで、ちがうのは受容体じゅようたいだけです。そのため研究けんきゅうチームは、受容体じゅようたいのちがいがアレルギーの現あらわれ方かたの個人差こじんさを生うむ原因げんいんの一ひとつになっている可能性かのうせいがある、と考かんがえています。同おなじダニのアレルギーでも、人ひとによって病気びょうきの現あらわれ方かたがちがう理由りゆうを解とき明あかす手てがかりになるかもしれません。