1買い物客が、とつぜんさいがいの中に げきのようなぼうさいくんれん


カロリーの高い食べ物をとりすぎると、ものをおぼえたり考えたりする力が下がります。この力を「認知機能」といいます。東京科学大学の研究チームは、ていきょう大学といっしょに、なぜそうなるのかを体の中の小さな分子のレベルでつきとめたと、9月17日に発表しました。この研究をまとめた文章は、9月12日に Molecular Psychiatry という科学のざっしにのりました。

かぎをにぎっているのは、のうの中の「シナプス」です。のうにはたくさんの神けいさいぼうがあり、神けいさいぼうどうしはシナプスというつなぎ目でじょうほうをやりとりしています。シナプスがつながってできる道すじを「神経回路」といい、この回路がうまくはたらくことで、わたしたちはものをおぼえたり考えたりできます。研究チームは、高カロリーの食べ物がこのシナプスに問題を起こしていることを見つけました。
そのしくみは、つぎのような流れです。まず、カロリーをとりすぎると、「インスリン」が出す合図を通じて、PPARγという分子のはたらきがおさえられます。インスリンは、食べたあとに体の中で出るもので、体がエネルギーを使うのを調整しています。つぎに、PPARγのはたらきがおさえられると、PQBP1という分子がへります。そして、PQBP1がへると、シナプスをつくっている分子がおかしくなり、神けい回路のはたらきが下がります。PQBP1がへることから始まるこの流れを明らかにしたのは、世界ではじめてです。
PQBP1は、「知的障害」や「アルツハイマー病」にかかわることが知られている分子です。知的障害は、考えたり学んだりすることがむずかしくなることで、アルツハイマー病は、年をとってからおぼえたことをわすれやすくなる病気です。
研究チームは、このしくみを使って、なおすやり方もためしました。「糖尿病」という、インスリンがうまくはたらかなくなる病気の薬の中には、PPARγのはたらきを高めるものがあり、すでに売られています。この薬を、高カロリーの食べ物を食べさせたマウスにあたえると、シナプスの問題がよくなり、下がっていた考える力もよくなりました。マウスは、じっけんに使われる小さなネズミです。また、PQBP1を目あてにした「遺伝子治療」でも、同じようによくなりました。遺伝子治療は、体の中のいでんしにはたらきかけて病気をなおすやり方です。
今回の研究で、食べすぎで下がった考える力を、薬でなおせるかもしれないという見こみがしめされました。