岡山大学 ウイルスで作ったがんの新薬 国に申しこむ
みなさんは、かぜを引いたとき、ウイルスのせいで体の調子が悪くなった経験があるかもしれません。ウイルスは、ふつうわたしたちの体に悪いはたらきをします。ところが、その同じウイルスを使って、こわい病気である「がん」をやっつけようとする新しい薬の研究が、二十年以上前から続けられてきました。岡山大学はそのうちの一つです。
2025年12月18日、岡山大学と、岡山大学から生まれたバイオの会社であるオンコリスバイオファーマ株式会社、そして薬を売る仕事をする富士フイルム富山化学株式会社が、「テロメライシン(OBP-301)」という新しい薬について、国の厚生労働省に「使えるようにしてください」と申しこんだことを発表しました。
テロメライシンは、2004年に岡山大学が開発した、「腫瘍溶解ウイルス製剤」とよばれる薬です。かぜの原因になる「アデノウイルス」というウイルスの遺伝子を、人の手で作りかえてつくられています。
この薬には、ふしぎな仕組みがあります。「テロメラーゼ」というはたらきが活発に動いているがんのさいぼうの中だけで、ウイルスがどんどん増えて、そのさいぼうをこわします。正常なさいぼうではウイルスが増えないので、体への悪いえいきょうが少なく、安全に使えるよう工夫されています。
この薬の対象は、手術や、薬と放射線を組みあわせる治りょうがむずかしい食道がんの人たちです。米国と日本国内の十七のしせつで行われた第II相の試験では、対象になった人のうち約半分で、食道のがんが消えるという、とても高い結果が得られました。放射線治りょうと組みあわせたときの効果も確かめられています。
薬を売る仕事は富士フイルム富山化学株式会社が担当する予定で、年内にも売り始められる見こみです。
「腫瘍溶解ウイルス」とは、がんのさいぼうだけをこわすように作りかえられたウイルスのことです。「臨しょう試験」とは、新しい薬が本当に効くか、安全かどうかを、たくさんの人に協力してもらって調べるテストです。「厚生労働省」は、薬や病院の仕組みを決める国の役所です。
ふつうは病気の原因になるウイルスを、人のちえで「薬」に変えるこの研究は、岡山大学で長い時間をかけて続けられてきました。手術がむずかしい食道がんで苦しむ人にとって、新しい希望となるかもしれません。みなさんが大人になるころには、もっといろいろな病気が、こうした新しい仕組みの薬で治せる時代になっているかもしれません。