人の「遺伝子」を書きかえる技術に、新しい法律ができます
みなさんは理科で、人が母親の体の中で受精卵から育ち、およそ38週かけて生まれてくることを学びました。魚も、受精した卵から子がかえります。生き物の体の色や形が少しずつちがうのは、体の「せっけい図」のようなものが、親から子へ受けつがれるからです。この「せっけい図」のもとになるものを「遺伝子」と言います。
近年、この遺伝子を書きかえる「ゲノム編集」という技術が発達してきました。病気を治したり、作物を育てやすくしたりと、役に立つと期待されています。しかし、もしこの技術を、人の赤ちゃんのもと(受精卵が育ち始めた、ごく小さなもの。これを「胚」と言います)に使うと、生まれてくる子どもだけでなく、その先の世代にまで、えいきょうが伝わってしまうかもしれません。そこで、どこまで使ってよいのかを決める必要が出てきました。
そこで国は、「ヒトゲノム編集胚等のとりあつかいの規制に関する法律案」という新しい法律を作ろうとしています。この法律案は、令和8年(2026年)4月10日に内閣から国会に提出されました。その後、衆議院で6月16日に、参議院の委員会で7月16日に可決され、法律になろうとしています。
この法律でいちばん大切なのは、「ゲノム編集」をした人の胚や、子どもをつくるもとになる精子や卵のもとを、人や動物のおなかの中にもどす(移植する)ことを、原則として禁止する、という点です(第3条)。このきまりを破った人には、10年以下けいむ所に入るか、1000万円以下のおかねをはらうという、とても重いばつがあり、その両方が科されることもあります(第19条)。
ただし、この法律は研究そのものを全部禁止するわけではありません。ゲノム編集した胚などを作ったり、ほかからゆずり受けたり、外国から輸入したり、使ったりする人は、前もって計画書を、国の主務大臣に届け出なければなりません(第6〜8条)。そして、その届出が受け取られてから60日がたった後でなければ、始めてはいけないと決められています。
もし届け出なかったり、うその届出をしたりすると、1年以下けいむ所に入るか、100万円以下のばつを受けます(第20〜22条)。このように、もとになる研究は届出をすればできるようにしながら、正しく安全にとりあつかえるよう、ルールを作っているのです。この法律は、正式に決まった日から1年たった後に、はたらき始めます。
最後に、難しい言葉を整理します。「遺伝子」は、体の色や形などを決める「せっけい図」のもとで、親から子へ受けつがれます。「ゲノム編集」は、その遺伝子を書きかえる技術です。「胚」は、赤ちゃんになる前の、ごく小さなもとのことです。「届出」は、何かをする前に、国などに前もって伝えておくことです。
「ゲノム編集」は、これまで治せなかった病気を治せるかもしれない、すばらしい技術です。その一方で、人の赤ちゃんのもとの遺伝子を書きかえると、その子や、さらに先の世代にまで、えいきょうがつづくため、気をつけて使う必要があります。今回の法律は、大切な研究はつづけられるようにしながら、あぶない使い方を止めようとするものです。みなさんが大人になるころ、この技術はもっと身近になっているかもしれません。だからこそ、どんなルールで使うのかを、今から考えておくことが大切です。