絵の具も顔料も使わずに「白」をつくる 京都大学などが新しい技術を発表

絵の具も顔料も使わずに「白」をつくる 京都大学などが新しい技術を発表
キホキルス 出典: Andy parnell (CC BY-SA / Wikimedia Commons)

白い絵の具や白い紙、白いプラスチック。身の回りにある白い物の多くは、「酸化チタン」という白い粉を使って色をつけています。酸化チタンは、物に色をつけるための粉である「顔料」の中で、白色の主流になっている材料です。ところが、この酸化チタンには、生き物の遺伝子を傷つけるおそれがあるのではないかという心配があります。そのためEU(ヨーロッパ連合)は2022年に、酸化チタンを食品にまぜる材料として使うことを禁止しました。白い色をつくるための、新しい方法が求められていたのです。

絵の具も顔料も使わずに「白」をつくる 京都大学などが新しい技術を発表
キホキルス 出典: Andy parnell (CC BY-SA / Wikimedia Commons)

こうした中、京都大学アイセムスのイーサン・シバニア教授や、東京都立大学などの研究グループは、顔料もとりょうも使わずに世界最高レベルの白色をつくることに成功したと発表しました。研究の成果は、2026年9月10日(日本時間)に、イギリスの科学誌ネイチャーにのりました。

研究グループが確立した技術は「ディープフォーム フォトリソグラフィ(DFP)」という名前です。プラスチックなどの「高分子」(小さな分子が長くつながってできた物質)に、目に見えない「紫外線」という光を当て、そのあと液体にひたします。すると、高分子の中にとても細かいあわ(フォーム)のような構造ができます。このあわの構造が、あらゆる波長の光を何度もはね返す(散乱させる)ため、材料そのものが酸化チタンと同じくらい白く見えるのです。この方法は、ポリスチレンやポリカーボネート、PETなど、いろいろな種類のプラスチックに使うことができます。

研究グループが手本にしたのは、東南アジアにすむコガネムシのなかま、キホキルス属の虫です。この虫は、厚さがわずか5から10マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)という、うすい体の表面で白い色を実現しています。

この技術には、白い色をつくる以外の特ちょうもあります。解像度が20000dpi(1インチ、約2.5センチメートルの中に並ぶ点の数)という、とても細かい印刷ができます。さらに、この加工でできた表面は、水を強くはじく性質ももっています。水や油をはじく材料としては、これまで「PFAS」と呼ばれる化学物質が使われてきましたが、研究グループは今回できた構造が、PFASの代わりになる材料として期待できるとしています。

この研究は、日本学術振興会の科研費と、京都大学・三菱商事スタートアップ・カタパルトの支えんを受けて行われました。