1光で脳の神経をあやつる研究にノーベル賞 アメリカとドイツの3人


令和8年8月、千葉県に激しい雨をふらせた線状降水帯には、一つの大きな疑問がありました。この雨雲は、本来なら速く動いて通りすぎていくはずの種類だったのに、なぜ千葉の上で長い時間とどまっていたのでしょうか。

「線状降水帯」は、次々にできた発達した積乱雲が線のように並び、同じ場所に長く強い雨をふらせる現象です。今回の線状降水帯は「スコールライン型」と呼ばれる種類でした。スコールライン型は、非常に発達した積乱雲をともない、激しい雨をふらせるのが特ちょうで、ふつうは速い速度で移動していきます。ところが今回は、千葉県の大部分をしめる「房総半島」の付近に長い時間とどまるという、めずらしいことが起きていました。
気象庁気象研究所は令和8年9月10日、この線状降水帯がなぜとどまったのかを調べた結果を、速報として発表しました。「速報」は、くわしい調べがすべて終わる前に、まず分かったことを早めに伝えるものです。
気象庁気象研究所によると、雨雲がとどまった原因は、二つの力のつり合いにありました。「冷気層」と呼ばれる冷たい空気の層が、雨雲を東へ動かす力になっていました。一方で、太平洋からは西向きの風が流れこんでいて、雨雲にとっては向かい風になっていました。東へ動かす力と西向きの向かい風がバランスしたため、雨雲の移動速度が大きくおさえられたのです。
さらに、雨雲の北部で特に強い雨が観測された地域では、積乱雲の中にうずが発生していました。このうずが、その場所で上向きの空気の流れを強め、雨のつぶができるのを進めて、強い雨をもたらす一因になったとみられています。
ふつうなら速く通りすぎるはずのスコールライン型の雨雲が、風の力のつり合いによって同じ場所にとどまり続けたことが、千葉に激しい雨をふらせた大きな理由だったのです。

白い絵の具や白い紙、白いプラスチック。身の回りにある白い物の多くは、「酸化チタン」という白い粉を使って色をつけています。酸化チタンは、物に色をつけるための粉である「顔料」の中で、白色の主流になっている材料です。ところが、この酸化チタンには、生き物の遺伝子を傷つけるおそれがあるのではないかという心配があります。そのためEU(ヨーロッパ連合)は2022年に、酸化チタンを食品にまぜる材料として使うことを禁止しました。白い色をつくるための、新しい方法が求められていたのです。

こうした中、京都大学アイセムスのイーサン・シバニア教授や、東京都立大学などの研究グループは、顔料もとりょうも使わずに世界最高レベルの白色をつくることに成功したと発表しました。研究の成果は、2026年9月10日(日本時間)に、イギリスの科学誌ネイチャーにのりました。
研究グループが確立した技術は「ディープフォーム フォトリソグラフィ(DFP)」という名前です。プラスチックなどの「高分子」(小さな分子が長くつながってできた物質)に、目に見えない「紫外線」という光を当て、そのあと液体にひたします。すると、高分子の中にとても細かいあわ(フォーム)のような構造ができます。このあわの構造が、あらゆる波長の光を何度もはね返す(散乱させる)ため、材料そのものが酸化チタンと同じくらい白く見えるのです。この方法は、ポリスチレンやポリカーボネート、PETなど、いろいろな種類のプラスチックに使うことができます。
研究グループが手本にしたのは、東南アジアにすむコガネムシのなかま、キホキルス属の虫です。この虫は、厚さがわずか5から10マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)という、うすい体の表面で白い色を実現しています。
この技術には、白い色をつくる以外の特ちょうもあります。解像度が20000dpi(1インチ、約2.5センチメートルの中に並ぶ点の数)という、とても細かい印刷ができます。さらに、この加工でできた表面は、水を強くはじく性質ももっています。水や油をはじく材料としては、これまで「PFAS」と呼ばれる化学物質が使われてきましたが、研究グループは今回できた構造が、PFASの代わりになる材料として期待できるとしています。
この研究は、日本学術振興会の科研費と、京都大学・三菱商事スタートアップ・カタパルトの支えんを受けて行われました。

2026年1月11日、中国の北京から北海道の新ちとせ空港に、一機の飛行機が着きました。その乗客の一人が手荷物として日本に持ちこもうとしていたのは、ひづめの付いたヤギの肉、8.23キログラムでした。乗客はこの肉を持っていることを空港で申告していましたが、肉は輸入検査で不合格となり、日本の中に持ちこむことは認められませんでした。

不合格になった肉は、農林水産省動物けんえき所がくわしく調べました。そして4月24日、農林水産省動物けんえき所は、この肉から感染性のある口蹄疫ウイルス(O型)を確認したと公表しました。「口蹄疫」は、牛やぶた、羊、ヤギなどの動物の間で広がりやすい病気で、口やひづめのあたりに水ぶくれなどができます。「感染性のある」とは、動物にうつす力をもった、生きたウイルスという意味です。O型は、こうていえきウイルスにいくつかある型のうちの一つです。
動物けんえき所は、空港や港で見つかった肉などを定期的に調べる「モニタリング検査」を行っています。この検査では、これまでに3つの検体からこうていえきウイルスの遺伝子が見つかっていました。検体とは、検査のために取った材料のことです。遺伝子が見つかるということは、ウイルスのかけらがあったという意味で、そのウイルスがまだ生きているかどうかまでは分かりません。今回は、その3つのうちの1つから、初めて生きたウイルスそのものを取り出すことができたのです。
遺伝子が見つかった3つの検体の内訳は、乗客の手荷物から見つかったものが2例、国際郵便物から見つかったものが1例です。
動物けんえき所は、外国から持ちこまれる動物や肉などに病気のもとがまじっていないかを調べ、日本に病気が入るのを防ぐ「検疫」という仕事をしています。空港での輸入検査も、その一つです。今回の結果は、外国からの手荷物の中に、日本の動物にうつる力をもったウイルスが実際に入っていたことを示しています。