1光で脳の神経をあやつる研究にノーベル賞 アメリカとドイツの3人


ハンバーガー店の看板やスーパーのちらし、動画サイトの広告には、湯気の立つ料理やつやつやした果物の写真がならんでいます。そうした写真を見て「おいしそう」と感じ、つい食べたくなることがあります。

食べ物の写真には、見る人に「食べたい」と思わせる力があります。そのため、店や会社は商品を売るときに写真を大切にしてきました。そして今は、その写真をカメラで写す代わりに、AIに作らせることもできるようになっています。「AI生成画像」とは、人工知能が文章などの指示をもとに、コンピューターの中で新しく作り出した画像のことです。
では、AIが作った食べ物の画像を見ても、本物の写真と同じように「食べたい」と感じるのでしょうか。ドイツのデュースブルクエッセン大学とLVR大学病院エッセンのアレクサンダー・ディール氏の研究チームが、この点を実験で調べ、2026年8月15日に科学誌「Scientific Reports」で発表しました。
実験には87人が参加しました。参加者は、AIが作った食べ物の画像と、実物をカメラで写した写真を組にした60組を、インターネット上で見て評価しました。評価したのは、「リアルさ」(本物らしく見えるか)、食べたい気持ち、「カロリー量」(どれくらいエネルギーがありそうか)、「健康度」(体によさそうか)の4つの点です。同じ参加者が両方の画像を評価する方法にして、AIの画像と実物の写真を直接くらべられるようにしました。
その結果、AIが作った画像は、実物の写真にくらべてリアルさの評価が、たまたまとは言えないほどはっきりと低く、食べたい気持ちも下がりました。一方で、健康度とカロリー量の評価は、AIの画像と実物の写真で差がありませんでした。つまり、AIの画像は「本物っぽくない」と感じられて食欲をそそりにくいものの、「体によさそうか」「エネルギーが多そうか」という判断は、本物の写真を見たときと変わらなかったのです。
ただし、例外もありました。AIが作った画像の方が実物より「よりリアルに見える」と評価された場合には、逆に健康度や食べたい気持ちの評価が上がっていたのです。研究チームは、本物以上に本物らしく見える「ハイパーリアリズム」が、食べ物への評価を高めることを示したと報告しています。
今回の実験で、AIが作った食べ物の画像が見る人の食欲に働きかける力は、実物の写真より弱いことが分かりました。ただし、AIの画像が本物の写真よりも本物らしく見えるときには、その働きが逆に強まることも分かりました。