水が少なくても育つコムギを発見 神戸大学などのチーム
みなさんが毎日食べているパンやめん類は、コムギからつくられています。コムギは、わたしたちの食事を支える大切な作物の一つです。しかし、コムギがよく育つためには、たくさんの水が必要です。世界には雨が少なく、土がかわいた場所もたくさんあります。これから先、世界の人口が増えていくと、水が少ない土地でも育つコムギが、ますます求められます。そこで、水をあまり使わなくても、かわいた状態に強いコムギをつくる研究が進められています。
2026年5月8日、神戸大学大学院農学研究科の妻鹿さんたちの研究チームが、水の消費をおさえながら、かわくことに強いコムギを見つけたと発表しました。妻鹿さんたちは、東京農工大学、岡山大学、山口大学、鳥取大学と力を合わせて、この研究を行いました。研究の内容は、2026年4月19日に「Plant, Cell & Environment」という科学のざっしにのせられました。
見つかったのは『WS1』とよばれる、ふつうのコムギから少しだけ性質がかわったコムギです。実験では、20日間水をあげるのを止めても、そのあと14日間水をあげると元気に回復する、高い生き残る力を見せました。
妻鹿さんたちは、WS1がなぜかわくことに強いのか、その仕組みも明らかにしました。ふつう、植物は土がかわると「アブシシン酸(ABA)」というものを使って、葉にある小さなあな「きこう」を閉じ、水が外へ出ていくのをふせぎます。ところがWS1では、このABAのはたらきが特別に強いわけではありませんでした。
そのかわりWS1では、きこうの開き方がふつうのコムギより小さくて、水を節約していました。さらに「プロリン」というものが、ふつうのコムギの2倍近くもたまっていました。また、体の中のタンパク質の形やはたらきをかえる「リン酸化」のしかたにも、大きな変化が見られました。これらによってWS1は、「育つことよりも、生き残ることを先にするモード」に切りかわっていたのです。おどろいたことに、WS1は土がかわく前の平常時から、あらかじめかわくことに備えた状態になっていました。
今回のニュースには、少し難しい言葉が出てきました。「きこう」は、葉の表面にある小さなあなで、ここから水分が出たり、空気を取り入れたりします。「プロリン」は植物の体の中にたまるもので、かわくことから体を守る働きがあると考えられています。「リン酸化」は、タンパク質の形やはたらきを切りかえるしくみのことです。WS1は、これらをうまく使って、水を大切にしながら生きのびていたのです。
水が少ない土地でも育つコムギが広まれば、世界の食べ物をつくる力を守ることにつながります。日本でも食べ物の多くを外国にたよっているため、こうした研究は、わたしたちのこれからの食事や未来を支える大切な一歩になりそうです。