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小わく星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小わく星リュウグウの砂について、新しい発見が発表されました。砂の中にある塩の「結晶」(水にとけていた物が固まってできたつぶ)のまわりに、「窒素」(空気の大部分をしめている気体で、生き物の体をつくる材料にもなる)をふくむ物質がぎゅっと集まっていたのです。東京科学大学のきぶかわ陽子じゅん教授や京都大学の松本とおる特定助教らに、分子科学研究所、広島大学、愛媛大学、JASRIなどが加わった研究グループが、2026年8月27日付で国際科学誌『Nature Astronomy』に発表しました。JAXAや物質・材料研究機構の研究者も参加しています。

はやぶさ2はリュウグウの表面の砂を回収し、砂を入れたカプセルは2020年末に地球へ帰ってきました。今も世界中の研究者がこの砂を調べていて、これまでにアミノ酸や、DNAなどの部品になる「核酸塩基」といった、生命の材料になる有機物が見つかっています。
リュウグウは、約45億年前に生まれた大きな天体のかけらでできた小わく星です。このもとになった天体を「母天体」といい、その内部には水が流れていました。リュウグウの砂のつぶの大部分は、岩石と水が反応してできた「粘土鉱物」(細かいつぶでできた、ねん土のような鉱物)です。炭酸ナトリウムや岩塩(塩化ナトリウム)をふくむ塩の結しょうがすじのように入った部分は、ごくまれにしかなく、電子けんび鏡で見つけられていました。
研究グループは今回、この塩の結しょうのまわりを、赤外線やX線を使ってくわしく調べました。赤外線を当てたところ、アンモニアがあることを示す光の吸収が確かめられました。さらに、塩の結しょうのまわりから小さな板をくりぬき、愛知県岡崎市にある分子科学研究所の実験しせつUVSORと、兵庫県のはりま科学公園都市にある大型放射光しせつSPring-8で、X線をどれだけ吸収するかを調べました。
その結果、水にとけやすい炭酸ナトリウムや岩塩の結しょうのまわりに、ちっ素をふくむ塩の結しょう(しょう酸ナトリウム)、アンモニア、炭素とちっ素が強く結びついた有機物(ニトリルまたはシアン)といった、ちっ素の化合物が集まっていることが分かりました。炭酸ナトリウムの近くのねん土鉱物からはアンモニアを示すX線の吸収が見られ、ケイ素と酸素でできた板が何枚も重なったねん土鉱物の板と板の間に、アンモニウムという物質が入りこんでいると考えられます。一方、塩をふくまない別の砂からは、ちっ素のはっきりしたしるしは確かめられませんでした。アンモニアは、塩の結しょうの近くに集中しているのです。
なぜ塩のまわりに集まっていたのでしょうか。研究グループは、母天体の内部で水がこおったり蒸発したりして減っていくときに残った「濃い塩水」から、塩の結しょうが固まって出てきたと考えています。食塩水から水を蒸発させると食塩が出てくるのと同じように、水が減るほど塩水はこくなり、その中にとけていたちっ素の化合物も高く集められたというわけです。最後に残ったこい塩水は、生命の材料をつくるのに都合のよい場所だった可能性があります。
母天体は、水や二酸化炭素、アンモニアが氷のまま残れる「雪線」(太陽からこれより遠いと氷がとけずに残るという境目)よりも遠い、氷が豊富な場所で生まれ、大量の氷を取りこんだと推定されています。それは木星よりも遠い場所です。今のリュウグウが回っている地球と火星の間の通り道は、雪線よりかなり内側にあります。
また、地下に塩水があると予想されている準わく星セレスでは、アンモニアをふくむねん土や炭酸ナトリウムが見つかっています。セレスにも、リュウグウと似た塩水の場所があるのかもしれません。