シカの食べすぎで山があれた? 滋賀県のいぶき山で土石流、専門家が原因を調査
みなさんは社会科で、森林には水をたくわえたり、災害を防いだりする働きがあることを学びましたね。山に生えている草や木は、根で土をおさえ、雨水を地面にしみこませて、土砂くずれなどの災害を防いでいます。ところが、野生のシカが増えて草や木を食べすぎると、山の地面がむき出しになってしまうことがあります。滋賀県米原市にある「伊吹山」で、まさにそれが原因と考えられる災害が起きました。
林野庁は、令和6年(2024年)10月28日、いぶき山の勝山谷川で起きた「土石流」について、専門家によるきん急の現地調査の結果を公表しました。この調査は、令和6年9月12日から13日にかけて、林野庁と滋賀県、米原市、そして東京農工大学や森林研究・整備機構森林総合研究所などの専門家が合同で行ったものです。いぶき山では、令和6年7月1日の午前10時ごろ、勝山谷川で土石流が発生し、住宅2けんでゆかの上まで、2けんでゆかの下まで土砂が流れこみ、県道も一部が通行止めになりました。さらに7月15日と7月25日にも土石流が起き、被害を受けた家はのべ7けんにのぼりました。調査の結果、いぶき山の3合目から山頂にかけての上部のしゃ面は、石灰岩でできていて地質や「植生」がもともと弱い上に、シカの「食害」によって植生がおとろえ、雨水が地面にしみこむ力が低下していたことが分かりました。そこに大雨が降ったため、地面にしみこめない水が地表を流れて土をけずり、土石流が起きたと結論づけられました。また林野庁は、シカの食害が原因で山があれ、人の家にまで被害が出た報告はこれまでになく、この地区が初めてのケースになった可能性があると明記し、シカの食害への対策が大切だと述べています。今後の対策としては、「治山ダム」や砂防えんていをつくること、「山腹緑化工」で植生を回復させること、シカによる食害を防ぐことなどが提案されました。
ここで、難しい言葉を確認しましょう。「土石流」とは、大雨などで山の土砂や石が水とまざり、谷や川を一気に流れ下る現象です。「植生」とは、その土地に生えている植物全体のことです。「食害」とは、動物が植物などを食べてしまうことで起きる被害のことです。「治山ダム」や砂防えんていは、流れてくる土砂をせき止めて災害を防ぐしせつのことで、「山腹緑化工」は、山のしゃ面に草や木を植えて緑をよみがえらせる工事のことです。日本の各地では、シカが増えすぎて森林の植物を食べてしまうことが問題になっています。植物が減ると山は雨に弱くなり、今回のように人のくらしをおびやかす災害につながることが、この調査で分かりました。森を守ることは、野生動物とのつき合い方を考えることでもあり、わたしたちの安全なくらしを守ることにもつながっているのです。