地震じしんで土地とちがもち上あがった能登半島のとはんとうの川かわ 「たき」が1年ねんで770メートル上流じょうりゅうへ移動いどう

地震で土地がもち上がった能登半島の川 「たき」が1年で770メートル上流へ移動
地震のあと八ヶ川の河口で地面の高さがどう変わったか。茶色は低くなった所、青は高くなった所 出典: Takahashi et al. 2026, Communications Earth & Environment 7:742 (CC BY 4.0)

2024年ねん1月がつ1日ついたち、能登半島のとはんとうでマグニチュード7.5の大おおきな地震じしんが起おきました。この地震じしんでは、半島はんとうの北部ほくぶや西部せいぶで海岸かいがんの土地とちが大おおきくもち上あがり、高たかいところでは5.2メートルも高たかくなりました。半島はんとうの西部せいぶを流ながれる八ヶ川はっかがわの河口かこうでも、土地とちが4メートル近ちかくもち上あがりました。

地震で土地がもち上がった能登半島の川 「たき」が1年で770メートル上流へ移動
地震のあと八ヶ川の河口で地面の高さがどう変わったか。茶色は低くなった所、青は高くなった所 出典: Takahashi et al. 2026, Communications Earth & Environment 7:742 (CC BY 4.0)

海岸かいがんがもち上あがると、川かわの出口でぐちである河口かこうと海面かいめんとの間あいだに大おおきな高たかさの差さができます。八ヶ川はっかがわでは、川かわの水みずが海うみに向むかって落おちこむ「たき」のような、流ながれの急きゅうな区間くかんが生うまれました。

東とう北ほく大だい学がく災さい害がい科か学がく国こく際さい研けん究きゅう所じょの高橋助教たかはしじょきょうたちの研究けんきゅうグループは、この河口かこうから約やく1キロメートルの区間くかんを調しらべ続つづけました。地震じしんの直後ちょくごはレーダーの画像がぞうや国土地理院こくどちりいんの航空写真こうくうしゃしんを使つかい、その後ごはドローンからレーザーを当あてて地形ちけいを細こまかく測はかる方法ほうほうと、ドローンで写真しゃしんをたくさんとって地形ちけいを測はかる方法ほうほうをくり返かえし行おこないました。こうして土地とちの高たかさを立体的りったいてきに表あらわした3次元じげんのモデルを何度なんどもつくり、川かわの形かたちがどう変かわっていくかを時間じかんを追おって調しらべました。

すると、たきの上うえのはし、つまり川底かわぞこのかたむきがゆるやかな区間くかんから急きゅうな区間くかんに変かわる地点ちてんである「遷急点せんきゅうてん」が、上流じょうりゅうへ動うごいていることが分わかりました。たきの上うえのはしでは、水みずの流ながれが川底かわぞこを強つよくけずります。けずられた分ぶんだけたきの位置いちは上流側じょうりゅうがわへ後退こうたいし、そのたびに上流側じょうりゅうがわの川底かわぞこが新あたらしくけずられていくのです。

この動うごきは、こう水すいをきっかけに一気いっきに進すすみました。2024年ねん7月がつの大雨おおあめのときと、地震じしんから約やく8か月半後げつはんごの2024年ねん9月がつ20日はつかから22日にちにかけて起おきた「奥能登豪雨おくのとごうう」のときです。この大雨おおあめでは能登半島のとはんとうの川かわで大おおきなこう水すいが起おき、こう水すいのピークのときに、たきの上うえのはしは急きゅうに上流じょうりゅうへ移動いどうしました。

地震じしんから1年ねんもたたないうちに、たきの上うえのはしは最大さいだい770メートル上流じょうりゅうへ移動いどうし、河口かこうから1キロメートル近ちかく内陸ないりくまで進すすみました。この間あいだに、川底かわぞこは最大さいだい2メートルもけずりこまれました。現在げんざい、たきの上うえのはしは、川かわの水みずをせき止とめるために人ひとがつくった「せき」に達たっし、そこで止とまっています。

川底かわぞこが深ふかくけずられたことで、川かわぞいには、もとの川原かわらが川かわより高たかいところに取とり残のこされた階段かいだんのような地形ちけいができました。「河岸段丘かがんだんきゅう」とよばれる地形ちけいです。けずられた川底かわぞこからは、約やく7400年前ねんまえの縄文時代じょうもんじだいに当時とうじの河口近かこうちかくに積つもったとみられる砂すなやどろの地層ちそうも見みえるようになりました。地震じしんで土地とちがもち上あがってから1年ねんもたたないうちに川かわぞいの階段状かいだんじょうの地形ちけいができたこと、そして海岸かいがんの階段状かいだんじょうの地形ちけいとそれにつづく川かわぞいの階段状かいだんじょうの地形ちけいがほとんど同おなじ時期じきにできることを、これほど細こまかく観測かんそくしたのは世界せかいで初はじめてです。

一方いっぽう、川底かわぞこでは別べつの現象げんしょうも起おきています。細こまかい砂すなやどろが先さきに流ながされ、大おおきな石いしや人工じんこうのコンクリートのかけらが川底かわぞこに残のこる「アーマー化現象かげんしょう」です。残のこった石いしやかけらがよろいのように川底かわぞこを守まもるため、下したへのけずりこみは一時的いちじてきにおさえられました。そのかわり、横よこのがけをけずる「側方侵食そくほうしんしょく」が起おこり、川かわはばは60メートル以上いじょうに広ひろがりました。

この研究けんきゅうの結果けっかは、2026年ねん9月がつ14日じゅうよっかに科学かがくの専門誌せんもんし「Communications Earth & Environment」にのり、9月がつ16日にちに東北大学とうほくだいがく、一橋大学ひとつばしだいがく、東京大学とうきょうだいがく、北海道大学ほっかいどうだいがくなど8つの大学だいがくや研究機関けんきゅうきかんが発表はっぴょうしました。

地震じしんからは2年半以上ねんはんいじょうがたちましたが、川かわの変化へんかはまだ終おわっていません。研究けんきゅうグループは、八ヶ川はっかがわの河口かこうから約やく10キロメートルの区間くかんでは、今後こんご10年以上ねんいじょうにわたって川底かわぞこが低ひくくなったり川かわはばが広ひろがったりし続つづける可能性かのうせいがあるとしています。八ヶ川はっかがわでは、せきや橋はしの柱はしらの近ちかくがけずられたり、川岸かわぎしを守まもる護岸ごがんがくずれ落おちたりすることがすでに確認かくにんされています。能登半島北部のとはんとうほくぶのほかの川かわでも、同おなじような現象げんしょうが進すすんでいる可能性かのうせいがきわめて高たかいと研究けんきゅうグループはみています。