南鳥島の海の底から レアアースのどろ約50トンを回収 世界で初めて成功

スマートフォンやパソコン、電気自動車のモーターなどには、強い磁石をつくるために欠かせない特別な金属が使われています。こうした金属をまとめてレアアースと呼びます。レアアースは世界のどこにでもたくさんあるわけではなく、日本はこれまで、そのほとんどを外国から輸入してきました。日本は山地が多く、資源にとぼしい国です。しかし、海に目を向けると話は変わります。日本は多くの島からできた島国で、海に囲まれ、とても広い排他的経済水域をもっています。そして、その海の底には、レアアースを多くふくむどろがあることが分かっていました。ただし、そのどろがあるのは水深数千メートルもの深い海の底です。どうやってどろを船の上まで運び上げるかが、長い間の大きな課題でした。

2026年7月24日、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「海洋安全保障プラットフォームの構築」(プログラムディレクターは石井正一)と、国立研究開発法人海洋研究開発機構が、この課題に大きく近づく結果を発表しました。調べたのは、南鳥島の周辺にある日本の排他的経済水域の、海底の下にあるレアアース泥です。
試験は2026年1月12日から2月14日まで、地球深部探査船「ちきゅう」を使って行われました。使われたのは、日本が独自に開発した閉鎖型循環方式という採鉱のしくみです。まず、このしくみが深さ6,000メートルの深い海の中でも確実に動くことを、パイプをつなぐ試験で確かめました。そして2026年2月1日には、長さ5,569メートルのパイプを使って、海底の下のどろを続けて船の上まで運び上げることに、世界で初めて成功しました。
船の上に回収したどろは、海水を取り除いたあとの重さで約50トンありました。その成分をくわしく調べたところ、ふくまれるレアアース全体のうち、約54%がイットリウム、ガドリニウム、ジスプロシウムなどの中重レアアースだと分かりました。また、体に害のある物質や放射性物質については、心配になるような量は見つかりませんでした。海のまわりのようすを調べる試験でも、この鉱物によってまわりの海がよごれるおそれは低いと判断されました。
内閣府と海洋研究開発機構は、令和9年(2027年)2月から本格的な採鉱試験を行い、令和10年(2028年)3月までに、どれくらいの費用がかかるかという経済性の評価もふくめた総合的な評価を行う予定です。
ここでいくつかの言葉を説明します。「排他的経済水域」とは、海岸から遠くはなれたところまで広がる海で、その国が魚や海底の資源を利用する権利をもつ場所です。「レアアース泥」は、レアアースを多くふくんでいる海底のどろのことです。「閉鎖型循環方式」は、どろをまわりの海に出さないように閉じたままにして船まで運び上げる、日本が独自に開発した採鉱のしくみです。レアアースはたくさんの種類に分けられますが、その中で重さが中くらいから重いなかまを「中重レアアース」と呼びます。
海底の資源を実際に使えるようになるかどうかは、これからの採鉱試験と評価によって決まります。それでも、深い海の底からどろを運び上げる技術が世界で初めて確かめられたことは、大きな一歩です。もし自分の国の海から資源を得られるようになれば、わたしたちが毎日使っているスマートフォンや電気自動車を支える材料の手に入れ方が変わるかもしれません。同時に、海の生き物や水のよごれに気をつけながら、限りある資源を大切に使っていくことも必要です。海の資源をどう生かし、どう守るのかは、持続可能な社会をつくるわたしたちの未来と深くつながっています。