AIで台風の進路予測がもっと正確に 気象研究所が研究成果を発表

夏から秋にかけて、日本には毎年たくさんの台風がやってきます。台風は大雨や強風で災害を起こすことがあるので、どこへ進むのかをできるだけ早く、正しく知ることがとても大切です。これまでの天気予報は、空気の動きなどをスーパーコンピュータで細かく計算する数値予報モデルという方法で作られてきました。ところが最近、大量のデータから自分で学ぶAI(人工知能)の技術が大きく進み、天気予報の世界でも使われ始めています。

気象庁気象研究所の山口むねひこさん(台風・災害気象研究部の研究室長)は、2024年12月17日に開かれた令和6年度気象研究所研究成果発表会で、AIを使った台風予測の研究を発表しました。山口むねひこさんは、Pangu-Weather(パングーウェザー)というAI気象モデルを使って台風の進路を予測し、2021年から2023年までに発生した全部で64個の台風で結果を確かめました。すると、AI気象モデルは従来の数値予報モデルよりも予測の誤差が小さく、2日先の予測では誤差が19%も小さくなりました。急に進む向きを変えたり、円をえがくように進んだりする特異な進路の台風でも、従来の技術と同じかそれ以上の精度が出ました。さらに、従来のモデルには、台風が向きを変えた後の進む速さを実際よりおそく予測してしまうくせがありましたが、AI気象モデルではこのくせがやわらぎました。一方、台風の強さの予測について、気象研究所は2019年3月からTIFSという方法を運用しています。これは気圧や風など26個のデータをもとに、機械学習で台風の強さを予測する方法で、海の状態を計算する海洋モデルと組み合わせると、台風の中心気圧の予測誤差がおよそ10%減りました。ただし、AI気象モデルは進路の予測は得意でも、強さの予測にはまだ課題が残っているそうです。この研究は、2026年5月に開かれた、地球や宇宙の研究者が集まる学会の日本地球わく星科学連合大会でも講演されました。
ここで、ニュースに出てきた言葉を確認しましょう。「数値予報モデル」は、空気の動きなどを物理の法則にもとづいてスーパーコンピュータで計算し、未来の天気を予測するしくみです。「機械学習」は、コンピュータが大量のデータからきまりを自分で見つけ出す技術のことです。「AI気象モデル」は、過去の気象データをこの技術で学んで天気を予測する新しいしくみで、Pangu-Weatherはその一つです。「TIFS」は、機械学習を使って台風の強さを予測する気象研究所の方法です。台風の進路や強さが今よりも正確に分かるようになれば、みなさんの家や学校でも早めに備えたり、安全な行動をとったりしやすくなります。AIと従来の技術が力を合わせることで天気予報がさらに進歩し、台風による災害から多くの命を守ることにつながっていくでしょう。