1光で脳の神経をあやつる研究にノーベル賞 アメリカとドイツの3人


ルリクワガタ類という小さなクワガタの仲間は、幼虫のときはブナやナラなどの広葉樹のかれてくさった木の中で育ち、成虫になると木の上で新芽を利用してくらします。このように広葉樹の森とつながりの深い生き物なので、ルリクワガタ類がどれくらいいるかを調べれば、その森が生き物にとってどんな場所なのかを知る目印になると期待されています。木材を切り出して使いながら、森にすむ生き物の豊かさである「生物多様性」も守っていくためには、森の生き物が木の切り方や森の管理の仕方にどう反応するかを、数ではっきりとらえる方法が必要だからです。

ところが、これまでのルリクワガタ類の調べ方には課題がありました。見つけられる数が調べる人の腕前によって変わってしまううえに、幼虫が育つくさった木をこわしてしまうこともあったのです。
そこで時任みのり助教らの研究グループは、2021年に新しいわなを提案しました。助教とは、大学などで研究や教育をする先生のことです。このわなは、メスのルリクワガタを使ってオスをさそい、飛んできたオスをつかまえる仕組みで、英語の名前を短くして「F-FIT」と呼ばれています。メスでオスをおびき寄せることから、"ハニートラップ"というあだ名もついています。決まった時間にどれだけつかまったかを数えれば、調べる人の腕前に関係なく、場所ごとの数を比べられます。
研究グループは今回、このわなを岐阜県のひだ市にある広葉樹の林業地に複数設置しました。林業地とは、木材にするための木を育てて切り出している森のことです。そして、それぞれのわなでつかまえた数を、わなを置いた場所の位置情報と結びつけて調べました。
その結果、森の内部に入るほどつかまる数が多くなりやすいことが見えてきました。また、一定の広さにどれだけ木が立っているかを表す「立木密度」とつかまる数との関係は、場所によってちがう可能性も示されました。ルリクワガタ類をつかまえた数を、森の生き物のすみやすさを表す目印として使えることが分かったのです。
この結果から研究グループは、森のそれぞれの場所で木をどう切り、どう管理するかだけでなく、木材を運び出すための設備や丸太を集めておく集積場、木を運び出す道などをつくるときに一時的にできる開けた空間と、まわりに残す森との位置関係を考えることが大切だと指摘しています。
研究グループは今後、調べる場所の規模を広げてさらに検証を重ね、実際の森林管理にこの方法を取り入れていくことを目指しています。この研究の成果は、2026年9月6日に世界の研究者が読む学術誌「Forest Ecology and Management」にオンラインで発表されました。