1光で脳の神経をあやつる研究にノーベル賞 アメリカとドイツの3人


海の深いところに、リュウキュウホラアナゴという魚がいます。ウナギ目ホラアナゴ科という、ウナギの仲間のグループに入る魚で、太平洋・大西洋・インド洋に広く分布しています。ところが、この魚として集められてきた個体をよく見ると、しっぽが太いタイプと、しっぽが細いタイプの2つがまじっていました。

北海道大学総合博物館の田城文人助教と、東海大学海洋学部の高見宗広講師の研究グループは、この2つのタイプのちがいに注目しました。しかし、深海の魚は集めるのがとても難しく、はじめは標本の数が少なかったため、2つを十分に比べることができませんでした。
そこで田城文人助教と高見宗広講師の研究グループは、10年以上にわたって採集調査を続け、国内外の博物館や大学に所蔵されている標本も調べました。こうして、子どもの魚から成魚まで、80個体をこえる体のデータを集めました。その結果、2つのタイプは、しっぽの太さだけでなく、背骨の数、うろこの形、「側線管」の長さでもはっきりとちがうことが分かりました。側線管とは、魚の体の横に線のようにならんでいる、細い管のことです。
さらに、外国の博物館に保管されているリュウキュウホラアナゴの「ホロタイプ標本」とも照らし合わせました。ホロタイプ標本とは、その種に名前をつけるときの基準となった、ただ1つの標本のことです。その結果、しっぽが太いタイプがリュウキュウホラアナゴにあたり、しっぽが細いタイプは、これまで学名がついていなかった魚だと明らかになりました。学名とは、世界共通で使われる生き物の名前のことです。田城文人助教と高見宗広講師の研究グループは2026年、この細いタイプを新種として、ホソオホラアナゴ(学名 Ilyophis fukuii)という名前で発表しました。標本は、するがわんをはじめとした南日本の、水深およそ1500メートルより深いところから集められたものです。
ホラアナゴ科の魚の多くは深海の底にすみ、大きな海の生き物の死がいを食べる種もふくまれます。そのため、深海の生態系を支える大切な生き物のグループだと考えられています。今回の成果は、世界中に分布すると考えられてきた深海魚の中に、複数の「隠蔽種」がふくまれている可能性をあらためて示すものです。隠蔽種とは、見た目がよく似ているために同じ種だと思われてきたけれど、実は別の種である生き物のことです。

地球は太陽のまわりを1年かけて回っていますが、その回り方や地球のじくのかたむきは、長い年月の間に少しずつ変わります。こうした地球の動き方を表す数のことを「軌道要素」といいます。じくのかたむきが変わると、北極や南極に近い地域に届く日光の量が変わり、気温にえいきょうします。

この軌道要素の変化を考えに入れると、大昔の地球の気候をこれまでより良く説明できることが、日本の研究チームの計算で分かりました。研究をしたのは、東京大学大気海洋研究所のあべあやこ教授とチャン・ウィン・レ特任研究員、東京科学大学地球生命研究所のひぐち太郎研究員と大石りゅう太研究員です。研究の結果をまとめた論文は、2026年7月22日に、Geophysical Research Letters(ジオフィジカル・リサーチ・レターズ)という科学の雑誌にのりました。
研究チームが調べたのは、約7000万年前の「白亜紀」後期の気候です。白亜紀とは、地球の長い歴史を区切った時代の一つの名前です。化石を調べた研究からは、このころの北極に近い地域は、産業革命の前より10度以上も気温が高く、とても暖かかったと推定されています。ところが、これまでのコンピューターによる計算では、この暖かさを十分には再現できていませんでした。
研究チームは、MIROC(ミロク)という全球気候モデルを使い、スーパーコンピューターで当時の気候をシミュレーションしました。全球気候モデルとは、地球全体の大気や海の動きを計算して、気候を再現するプログラムのことです。約7000万年前のマーストリヒチアン期と呼ばれる時期の大陸の配置を使い、空気中の二酸化炭素のこさだけでなく、軌道要素も変化させて計算しました。その結果、軌道要素の変化を考えに入れることで、化石から推定された北極の暖かさを、これまでより良く再現できることが分かりました。
なぜ軌道要素の変化がそれほど大きくきくのでしょうか。白亜紀後期には、今のような大きな「大陸氷床」、つまり陸の上をおおう大きな氷のかたまりがありませんでした。また、北半球の北極に近い地域には、今より広い陸地がありました。そのため、地球のじくのかたむきが変わったときの気温の変化が、今より大きくなっていたと考えられます。研究チームの計算では、北半球の北極に近い地域で、じくのかたむきが大きくなったときの気温の上がり方は、白亜紀では現代の数倍に達しました。