1光で脳の神経をあやつる研究にノーベル賞 アメリカとドイツの3人


植物がよく育つためには、ちっ素、リンと並んでカリウムという栄養が欠かせません。カリウムは植物の三大栄養素のひとつで、植物は「カリウムを通す入り口」を通してカリウムを取りこみ、体の中をめぐらせています。研究でよく使われる小さな植物シロイヌナズナには、この入り口が9種類あります。ところが、そのうちのひとつ「AKT5」は、遺伝子が見つかってから30年間、何を運ぶのか、どんな役目があるのかが分からないままでした。

このなぞにいどんだのが、東北大学大学院工学研究科の魚住のぶゆき教授、村岡勇樹助教たちの研究グループです。東北大学大学院生命科学研究科、生理学研究所、東京科学大学、東京農工大学などといっしょに、国際共同研究として調べました。
研究グループがまず見つけたのは、AKT5が働く条件です。AKT5は、体の中のさまざまな働きを助ける物質である「酵素」にスイッチを入れてもらうと、カリウムを通すようになることが分かりました。さらに、とても小さなものを見ることができる「クライオ電子顕微鏡」という道具を使ってAKT5の形を決め、スイッチが入る仕組みも明らかにしました。
つぎに、AKT5が植物の体のどこにあるのかを調べると、葉を支える細い部分である「葉柄」に多く集まっていることが分かりました。そこで、AKT5をなくした植物を育ててみると、ようへいが短くなり、すきまなく植える密植をしたときに育ちが悪くなりました。
これらの結果から、研究グループは、AKT5はまわりに植物がたくさんあるところで生き残る力を強くする、かぎになる分子だと考えています。AKT5の働き方がもっと分かれば、しゅうかく量を減らさずに、作物をせまい場所にたくさん植える技術につながると期待しています。
この研究の成果は、2026年9月3日午前3時(日本時間)に、アメリカの科学雑誌「Science Advances」にのりました。

海野徳二さんは、人が鼻をかむときに、鼻から出ていく空気の流れを機械で細かく測る実験をしました。協力したのは14才から48才までの男性15人です。海野さんは、和歌山県立医科大学の矢島洋さんとともに、「ニューモタコメーター」という空気の流れを測る機械を2台使い、左右の鼻のあなから出る空気の速さ・量・時間を調べました。さらに、鼻をかんだときに耳のあなの中(外耳道)の圧力がどう変わるかも測りました。

実験から分かったことは、大きく4つあります。1つ目は、鼻は左右を片方ずつかむのが正しく、効率もよいことです。2つ目は、強くかんでも中耳の感染に直接悪いえいきょうはなく、力を入れてかんでよいことです。3つ目は、かむ前にほどよく息を吸い、時間をかけてゆっくりかむと効果が高いことです。4つ目は、鼻をかむことが、のどより下の気管などにたまったものを出すのにも役立つことです。
この研究は「鼻のかみ方」という題で、1977年に日本耳鼻いんこう科学会の会報に発表されました。それから49年たった2026年9月4日、あさひかわ医科大学は、この研究が第36回イグ・ノーベル賞の医学賞を受賞したと発表しました。イグ・ノーベル賞は、人々を笑わせ、そして考えさせる研究におくられる賞です。
授賞式は9月3日の夜(日本時間では4日の早朝)に、スイスのチューリッヒで開かれました。海野さんは2022年8月に89才で亡くなっているため、あさひかわ医科大学耳鼻いんこう科・頭けい部外科学講座の3代目の教授であるたか原幹さんが、代わりに出席しました。
海野さんは1933年3月に生まれ、千葉大学医学部を卒業した医師です。1976年10月、あさひかわ医科大学に耳鼻いんこう科学講座ができたときに最初の教授となり、1998年3月に定年で退職した後は、同じ大学のめいよ教授になりました。