1光で脳の神経をあやつる研究にノーベル賞 アメリカとドイツの3人


北極に近いグリーンランドの北西部に、カナックという村があります。住民は約600人で、村のそばにはカナック氷河があります。「氷河」とは、長い年月をかけて積もった雪が固まってできた、川のようにゆっくりと動く大きな氷のかたまりです。カナック村の人たちは、この氷河からとけ出して流れてくる川の水を、飲んだり料理や洗たくをしたりする「生活用水」として使っています。

このカナック氷河で、13年間に厚さ5.4メートルの氷が失われたことが分かりました。北海道大学の大学院生のいまづたくろうさんと、同じ大学の低温科学研究所・北極域研究センターのすぎやましん教授らの研究グループが、名古屋大学、国立極地研究所とともに、2026年9月1日に発表しました。研究の内容をまとめた論文は、2026年6月18日に、氷河の研究をあつかう専門誌「Journal of Glaciology」にのせられています。この研究は、GRENE北極気候変動研究事業、ArCS、ArCS II、ArCS III、JSPS科研費の支えを受けて行われました。
研究グループは、2012年7月から、カナック氷河の標高243メートルから984メートルまでの6つの地点で、氷の厚さがどう変わるかを現地で観測し続けてきました。その結果、13年間で氷の厚さは合わせて5.4メートル減っていました。1年あたりでは平均およそ0.4メートルで、大人のひざの高さくらいの氷が毎年消えている計算です。ただし、減り方は年によって差があり、少ない年は0.23メートル、多い年は1.02メートルでした。
研究グループがくわしく調べたところ、氷の減り方には、雪のふる量よりも気温のほうが5倍も大きくえいきょうしていることが分かりました。そこで、この観測の結果をもとに、今後気温が1度上がった場合を予測すると、氷が失われる速さは今の2倍になると見こまれています。
カナック村では、氷河の氷がとける量が増えたことで、近ごろは川の水があふれるこう水のひ害も報告されています。氷河の水を毎日の生活に使っているカナック村にとって、氷のとけ方の変化は、くらしに直接かかわる問題になっています。

遠くはなれたインドネシアの火山がふん火したとき、なぜ日本の気象庁が、急いで発表を出すのでしょうか。

その理由は、火山の大きなふん火によって海の水が大きく動き、「津波」が起きることがあるからです。つ波は、海の水が大きく動いて陸におし寄せる波のことで、海を伝わって遠くの国まで届くことがあります。そのため気象庁は、海外で大きなふん火が起きたときにも、日本につ波が来るおそれがないかをすぐに調べます。
令和8年9月5日、気象庁は、インドネシアのクラカタウ火山で大きなふん火が起きたと発表しました。ふん火が起きたのは、日本時間で9月5日の午前2時50分ごろです。気象庁は、ダーウィンにある「航空路火山灰情報センター」の情報をもとに、この発表を出しました。航空路火山灰情報センターは、飛行機が安全に飛べるように、火山灰がどこまで広がっているかを調べて各国に伝えている機関です。
ふん火で上がったけむりは、約5万フィート、メートルで表すと約1万5000メートルの高さまで達しました。これは15キロメートルにあたり、ジェット機が飛ぶ高さよりも高いところです。
5日の午前8時30分の時点では、海外と日本国内の観測点で、このふん火によって起きたと考えられる大きな「潮位」の変化は観測されていません。潮位とは海面の高さのことで、つ波が来ると、海面の高さがふだんとはちがう動きをします。ただし、日本につ波が来るかどうかについては、気象庁がまだ調べているところです。つ波の心配がないと判断したときには、遠くはなれた場所で起きた地しんなどによるつ波について伝える「遠地地震に関する情報」で、別に発表することにしています。
今回の発表は2回目の発表にあたり、様子に特に変化がなければ、この発表をもって報道向けの発表は終わりになります。

地球は丸いボールのような形をしています。それを平らな紙の地図に写すと、どこかの土地の形や大きさが、のびたり縮んだりしてしまいます。昔から広く使われてきた「メルカトル図法」という地図の書き方は、方角を正しく表せるように工夫されたものですが、赤道からはなれた北や南の土地ほど実際より大きく見え、赤道の近くにある土地は実際より小さく見えてしまいます。

この地図の問題を世界の国々で話し合った結果が、2026年9月4日に出ました。国際連合の全ての加盟国が集まって話し合う国連総会(第80会期)の本会議で、「地図を正す」と題する決議が可決されたのです。「決議」とは、会議に加わる国々が投票で決めた意見や求めのことです。この決議は、アフリカの国々の集まりであるアフリカ・グループを代表して、トーゴが提出しました。
どの国がどう投票したかを記録に残す記録投票の結果は、賛成164、反対1、きけん(賛成にも反対にも加わらないこと)6でした。反対したのはアメリカで、きけんしたのはエストニア、ジョージア、リトアニア、モルドバ、セルビア、ウクライナの6か国です。
決議は、メルカトル図法が大陸どうしの大きさの比べ方をゆがめ、アフリカなど赤道の近くにある地域についての人々の見方をそこなっていると述べています。そのうえで、大陸の大きさを比べることが大切な場面では、「イコールアース図法」などの等積図法をもっと広く使うように求めています。「等積図法」とは、それぞれの土地の面積の割合が実際と同じになるように書かれた地図の書き方です。
提案国のトーゴの代表は、「ゆがんだ地図は、教育、人々の理解、文化、地政学(地理と政治の関係を考える学問)、開発についての語られ方、そしてアフリカの規模と可能性についての見方にえいきょうをあたえる」と発言しました。
決議には賛成する国だけでなく、反対やきけんをした国からもさまざまな意見が出ました。ロシアは、この決議を「植民地主義」や「新植民地主義」の遺産に向き合うものだとして支持しました。植民地主義とは、強い国が他の地域を支配して、自分の国のように従わせるやり方のことです。一方、ウクライナは、「この地図は、ロシアに一時的にせんりょうされている(軍の力でおさえられている)ウクライナの領土の一部を、とても受け入れられない形でえがいている」として、きけんしました。
ただ一つ反対したアメリカの代表は、この決議は国連の信用をそこなう「フジツボ」(船の底などにくっついて取れにくい小さな生き物)であり、「ばいしょう(過去の損害をお金などでつぐなうこと)と認知的正義」を進めるものだと批判しました。また、EU(ヨーロッパの国々の集まり)を代表して発言したアイルランドは、決議の目的には賛成しながらも、決議が対象とするはんいは「教育、理解を広める活動、地理を読み取る力」に限るべきだと述べました。
トーゴの代表は、こうも語っています。「公正な地図は世界の地理を変えるのではなく、世界の見方を変えるのです」。

北海道の北西部にある、とままえ町とはぼろ町の地層から、ふつうのアンモナイトとはちがう形をしたアンモナイトの化石が見つかりました。アンモナイトは平らなうずまき形のからを持つ生き物として知られていますが、この化石は「異常巻きアンモナイト」といって、平らなうずまきにならず、変わった形にからが巻いている仲間です。

化石が入っていた地層は、中生代の「白亜紀」というきょうりゅうが栄えていた時代のうち、サントニアン期とよばれる時期にできたものです。今からおよそ8630万年前から8360万年前にあたります。
公益財団法人深田地質研究所の相場大すけ主査研究員は、この化石をX線CTで調べ、からの内側のつくりを明らかにしました。X線CTは、物を切らずに内部のようすを画像にする装置です。その結果、この化石はツリリテス科というアンモナイトの仲間で、これまで知られていなかった新属新種であることが分かりました。相場大すけ主査研究員は2026年8月31日にこの発見を発表し、新しいアンモナイトにHeterocarinella japonica(ヘテロカリネラ・ジャポニカ)という名前をつけました。研究の内容は、古生物学の専門誌「Paleontological Research」に8月29日に発表された論文にまとめられています。
「属」は生き物を分類するときの単位の一つで、よく似た種をまとめたものです。ツリリテス科の新しい属が日本で見つかって報告されたのは、およそ150年におよぶ日本の古生物学の歴史の中で初めてのことです。
さらに大きな意味があるのは、ツリリテス科が生きていた時代です。これまでツリリテス科は、およそ9390万年前のセノマニアン期の終わりにほろびたと考えられていました。ところが今回の発見によって、種類の数を大きく減らしながらも、それからおよそ1000万年後のサントニアン期まで、今の北海道のあたりで生き残っていたことが分かりました。
今回の発見は、当時の北海道付近がアンモナイトの仲間にとっての「避難所」、つまりほかの場所では生きられなくなった生き物が生きのびられる場所になっていた可能性を示しています。